album

much,more,the MOST/the MOST

theMOSTcdjacket

the MOSTのデビューアルバム「much,more,the MOST」
[2001.5.21 Release]EWCD-0028 /¥2,310(税込)

 

1st Recording Review

[2001.01.30]

masa

何度かのライブ(デビューライブは「タダセイのひとりごと」コー ナーでレポート済み)とリハーサルを経ていよいよレコーディング本番。時は明けて2001年、新世紀最初のレコーディングがこのバンドとはうれしいこと だ。場所はSLASH!やClub TOKOでいつも使っている銀座の音響ハウス。我が家からも近く、大変便利がいいところだ。当日は12時に入りセッティング開始。入り口でマサに会い、一 緒にスタジオに入るとすでに塩田哲嗣(以下ノリ)も来ていてウオームアップ中。全員で健闘を誓い合う。今回のレコーディングはジャズなので、基本的に 「せ~の」で一発録りだが、一応全員ブースに入り、あとで楽器個々のバランス調整などが可能な状態にしておく。ところが今回のスタジオのブースはお互いの アイコンタクトが非常に取りずらくTVモニターを使用することに。まあ、これしか方法はないのでしょうがない、阿吽の呼吸を感じられるか??

shiota

mixer

今回のエンジニアは広兼氏。SLASH!の時にとてもいい仕事をしてくれた人で、信頼 度抜群。僕に関しては何もリクエストはない。だがマサは今までの豊富な録音体験から彼にマイクの交換を要求。コンデンサーマイクに替えて欲しいとリクエス トした。ここで「なにおう?!」と眉つり上げる人もいるかもしれない。エンジニアはまさに職人、「俺の音が気にくわねえんならとっととけえりやがれい!」 というのが当たり前かもしれない。ところがこの広兼氏、見かけもとっても柔和なのだが性格も至って優しいらしく、マサの言うとおりに替えてくれた。後にマ サが「あの時点でこのレコーディングは成功すると思ったよ」と語ったが、ミュージシャンとエンジニアの意思の疎通ができた一幕だった。思い通りの音になったマサはご機嫌。めでたしめでたし…

 

午後一時過ぎ、サウンドチェックスタート。録音メニューにない曲をサウンドチェック用に選ぶ。でない と何度もやっているうちにどんどん新鮮味がうすれていく危険性がある。録った音を聞いてみる。マサ曰く、「ドラムの定位をどうします?」今まであまり録音 に関して突っ込んだ勉強をしてこなかったので、答えに困る。いわゆるロック・ポップス系の録音ならドラムがセンターにきても問題ないらしいのだが、ジャズ の録音に関しては実際にライブハウスで見るように例えば右からドラム・ベース・サックスという感じで定位をさせたほうがスイング感がでるらしい。本当にマ サはプロだなあ、と思わせる。一ドラマーに終わらずアーティスト・プロデューサーという立場にも常にいる人なのだ。今回は一応僕のリーダー作の形を取って いるが、マサにおんぶしたところはたくさんある。ほんとに頼りになる人だ、あんたは!

定位の問題、音色の問題など色々注文を出してほぼ理想の音になったところでいよいよ録音開始。この時 点で午後二時。さあいったいどのくらいのペースで進行するやら… 録音は1/30,31の二日間。きょうはピアノレストリオのほうを五曲録ることにし ている。まずはソプラノで僕の曲「Nori’s Dilemma」(Tada)を 録音する。この曲はかなり前に書いた曲で旧題は「So Funny」だったのだが、今回ノリに敬意を表して(?!)タイトルを変えた。日頃多くのジレンマに悩んでいるこの若者の心情をプレイに反映してみまし た。ミディアムスローのブルースナンバーで、ウオームアップには最適の曲だ。3テイクほど録ったところでOK。実は個人的にはこの曲を録り終えた時点でレ コーディングの成功を確信していた。まず自分の体調・楽器の調子・リード、どれをとってもベストの状態だった。加えてソロも我ながらいい感じにできて、こ の調子で次の曲へ!!

seiji

体も温まったところでタイトルチューンになるであろう難曲「much,more,the MOST」(Tada)に 取りかかる。この曲は僕がこのピアノレストリオのために書き下ろした新曲。ライブでもなかなか満足のいかない曲だ。だがリハーサルを重ねるうちにテーマ部 分が安定してきて、この日はソロさえうまくいけば成功するだろうな、と思っていたが、さすがにワンテイクとはいかなかった。ノリは自分に納得できないらし く何度かやり直しを要求。だが全員が納得のいくテイクができる確率は非常に少ない。ましてドラマーなどは物理的に差し替えも不可能だ。ここで誰かがわがま まを言い出すときりがなくなるのでリーダーの独断で採用するテイクを決める。以前SLASH!のレコーディングの時も同じ問題が起きたがあの時はバンドプロデュースが壁となってなかなか事態の収拾がつかなかった。今回はプロデューサーも特に置いていないのでプロデュースもリーダーも俺、強権発動は当然の権利と思うことにする。

難曲が一曲終わったところで裏バンマスもこさん登場!なんと手作りの料理にシャンパン・ビールまで差し入れ。なんとうれしいではありませんか!本人曰く「気分は運動部のマネージャーね」。いえいえなにをおっしゃいますバンマス、監督気分でで~んとかまえといて下さい。

とりあえずご馳走はおあずけにして次の曲へ。オリジナル中心のこのバンドにあって数少ない他人の曲、といってもあまりにも偉大な他人オーネットコールマンの「The SPHINX」(O.Coleman)。 テーマがめっちゃかっこよくて、何かの機会にぜひやりたいと思っていた曲だ。コンセプトもThe MOSTにぴったり。これは快調に2テイクでOK。曲中でテンポが変わったりするところのスリルを楽しんで下さい!ってあんまり発売前に秘密をばらしちゃ うのもどうかと思うんだけど、これだけ読んでもきっとピンとこないでしょ?ジャズってそこがいいね。聞いてみないことには、ってのがあるから。まあ、発売 を楽しみにしてください!

快調にここまできて、時刻はだいたい5時ごろ。もう一曲だけ難曲をこなしてから食事休憩にしたい。気分的にも絶対その方が楽だし、ごはんもおいしいものね。そこで僕の曲「Some of the Things I Have」(Tada)に とりかかる。このアルバムのある意味でハイライトになる曲だ。詳細は述べないが、タイトルが示しているようにある有名スタンダードナンバーを基にした曲 で、キーワードは変拍子。あとは実際にアルバムを聴いてね!で、これこそマサなしには考えられない曲だ。曲を書いたときも頭にマサのドラムがあったからこ そできた。何度かリハーサルをしたときは、う~んやっぱりやめようかこれ、って感じになりかけた(自分が吹けない!!)が、さすが負けず嫌いマサ、前日の リハーサルできっちり仕上げてきた。それに乗っかって僕はとても楽をさせてもらい、この難曲も数テイク重ねただけでOK!!うん、これさえ終わればもう大 丈夫ってことで食事休憩に入る。

もこさんお手製の炊き込みご飯や卵焼きをいただきながら、僕は今までのレコーディングを思い返してい た。リーダー作を含めレコーディングの経験はたくさんしてきたが、正直言って今回のレコーディングは緊張感が直前まで出なくて焦っていた。よくも悪くもレ コーディング慣れしてきて、以前のように何週間も前からプレッシャーを感じる、ということは無くなってきた。それだけ自分というものを知った、とも言え る。実力以上のことをやろうとしなければ開き直れるものだ。それとメンバーを100%信頼できたのも大きい。以前は自分が何とかしなきゃ、と必要以上に肩 に力が入ったものだが、今回は人選の時点で半分以上仕事が終わった感じがした。このメンバーならどうにでもなる、という信頼感を強く持てた。要は集中力の 問題で、いざ本番というときに集中できればそのほうがいいに決まっているのだ。少しはおれも成長したかな、と一人心の中でニンマリしていたのを誰も気づく まい、ふふふ。

ゆっくり休憩して7時ごろ再開。残すはあと一曲、マサのオリジナル「Uchiiri」(Masa)だ。 この曲はなんと2000年12月14日、赤穂浪士の討ち入りの日にできたという。そのまんまのタイトルやんけ!とツッコミが入りそうだが、イントロも何と なく陣太鼓に聞こえなくもない。この曲もさすがマサの曲、一筋縄ではいかない。まずとてつもなく急速調であること、そしてまたまたキーワード、変拍子。こ の二つを頭に置いてアルバムを聴いてもらうとより楽しめると思いますよ(楽しめないか?)!やや疲れの出てきたタダセイ、このテンポになかなか乗り切れず 何度かテイクを重ねる。ノリの腕がだんだん死んでいく~~ごめんね、ノリ!少しの休憩をはさんで、自分に「集中!!」と気合いを入れ直して再チャレンジ。 今度はうまくいった!トコさん(故 日野元彦氏)から学んだ「集中」を思い出したおかげだ。

これで初日の録音、すべて終了!!時刻は8:00。予想以上にいいペースで進んだ。ホッと胸をなでおろす僕。もこさん持参のシャンペンで乾杯することに。とりあえず中打ち上げ、お疲れさま!あしたもよろしく!初日はおとなしく帰宅し、ダビングしてもらったMDを繰り返し聞いてみる。ミックスダウン前のものとはいえ、音もかなりいい感じに仕上がっている。あしたが楽しみ!とるんるんで就寝。あすはピアノの石井彰の入るバージョン。期待が膨らむ…

 

[2001.01.31]

ishii-seiji

さて二日目。この日は2:00スタート。楽器のセッティングなどもすんでいるのであとはピアノ入りのサウンドチェックを済ませるのみ。2:00前にスタジ オに着くとすでに全員ウオームアップ中。石井彰とがっちり握手をかわし健闘を誓い合う。この日もブース間のやりとりはモニターを通して行う。僕とノリは完 全に死角に入り見えない。が、この日はキューが必要な曲はさほどない。マサと僕、マサとノリのアイコンタクトで大丈夫なはずだ。さっくりとサウンドチェッ クを済ませ、さあ本番!きょうの最初の曲はマサの曲、「Critical Message」(Masa)だ。8Beatにのせてソプラノのメロディーが舞う。しかしピアノとベースはかなりトリッキーなラインをユニゾンする。ここにまたまた変拍子!!だが、マサの曲は変拍子が入っていても非常にナチュラルで歌っている。この曲も、エンジニアの広兼氏がさかんに「かっこいいっすねえ~」と言っていた。とても自然に流れる変拍子なのだ。そしてさすが石井彰、この難曲にもまったく動じず、石井ワールドを展開する。あっさり2テイクで終わってしまってやや拍子抜け。この調子だとかなり早く終わるかも?!

そして次の曲は石井彰がこのレコーディングのために書き下ろしてくれた新曲「Sometime in the Snow」(Ishii)だ。これも8Beatのゆったりしたテンポにソプラノのメロディーがのる。Keyが難しいのが難点だが、流れがとても自然なコード進行になっていて吹いていてストレスが溜まらない。このへんはやはり大阪音大作曲科主席卒業(日野晧正氏 談)の面目躍如か?!ここでも彼のリリカルなタッチのピアノがたまらなくいい感じに鳴っている。きのうのピアノレストリオとは全く別の世界がそこに展開している。まさにねらい通り!

こちらも約2テイクで終了。この曲の途中に裏バンマスもこさん登場。きょうもブーブクリコ持参で来てくれた。おまけにおいしいイチゴもつけて。う~ん、イチゴとシャンパン、神が与えたもうた最高の取り合わせ…あ~終わりが待ち遠しい!おあずけはつらいっす~~~

鼻先にニンジンぶらさげられた馬状態で次の曲へ。今度は僕の最初のアルバム「The GIG」に収録したオリジナル「Fontana di TREVI」(Tada)。 前回はピアノレスの二管編成で、ドラムもマレット主体のやや幻想的な感じでやってみたが、今回はファンクバージョン、しかもピアノが入る。石井のピアノが この曲にどんな生命を吹き込むのかを聞いてみたかったのだ。そしてこれも思惑通り素晴らしい世界が展開した。石井の一番の特徴である十二単のように何重に も折り重なったサウンドが広がる。これも2テイクOK!

あっという間にここまで三曲終わってしまった。これでマサとノリはお役ご免。お疲れさまでした!彼らが楽器を片づける間しばし休憩。なんだか きょうはうまくいきすぎ?この分では5時ごろには終わりそう…メンバー個々の力量が問われる曲が多い中、さすがとしかいいようのないテクニックでみん な乗り切ってくれた。人選に間違いなし!と改めて自画自賛。

最後に残した曲は「Theme from Betty Blue」。何年か前に大ヒットしたフランス映画「ベティーブルー」が 僕の大のお気に入りで、その中のワンシーンに主人公の男女がピアノ屋で向かい合ってグランドピアノを弾くシーンがある。なんと言うことはないシンプルな コードとメロディーなのだが、ずっと心に引っかかっていていつか自分のアルバムで何かの形でこの曲をやりたい、と願っていた。何ヶ月か前に石井君にビデオ を貸して「映画を見てもしやりたくなったらやろう」と言って置いたのだが、超多忙な彼、直前までビデオを見る機会が無く「ああ、今回も無理かな…」と あきらめていた。ところがレコーディング一週間前になって彼からのメールで「ビデオ見ました。共感しました。この曲やりたいです。」といってきたのだ!このときの喜びは筆舌に尽くしがたい。大げさなようだが、僕にとってはそれほど思い入れの強い曲なのだ。それが石井君の美意識にも触れたのだと思うととてもうれしい。

TadaIsii

30分ほどしてドラムセット等の片づけも終わり、石井君の顔が見えるようにピアノも大移動してセッティングOK。さあいよいよラストの曲だ。 この曲に関しては絶対に取り直しをしたくない。真剣勝負、一発勝負でいきたい。自分のテンションを高めていざ出陣!さてその結果は??次号を待て!!んな わけないか。もちろん一発OK!思い通りのものになった。石井彰を改めてリスペクトした瞬間だった。この人の音の広がり、感性、これは尋常ではありません。みなさん、アルバムほんとに楽しみにして下さいね!!

時刻はまだ5:00。大幅に早く終わってシャンパンで乾杯!MDにラフミックスをダビングしてもらう間、聴きながら打ち上げモードに入る。何 度も書くが、これほどスムーズに終わったレコーディングは初めてだ。内容に関しても素晴らしいものになったと思う。発売が待ち遠しい。

mostall

[左からタダセイ、もこさん、マサ、石井、ノリ]

この録音に際してお世話になったエンジニア広兼氏、EWE高見氏、守崎氏、宇郷女史、大坂君のローディー氏、僕のローディー赤津氏、そのほかオンキョーハウスのスタッフの方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。そしてバンドの名付け親はのすけ氏、It’s so funny氏、裏バンマス小川もこ嬢、フォーミラスタッフの皆様、リスナーの方々にも厚くお礼申し上げます。